
交渉人・遠野麻衣子 ハイジャック 第九回
五十嵐貴久
第八回はこちら交渉人ハイジャック Flight9 ライト1 桑山が大きく開けたドアから、麻衣子は捜査本部に入った。原と成宮、そして他の捜査官がパソコンの画面を食い入るように見つめている。 麻衣子も自分の席に戻り、マウスをクリックした。画面を拡大すると、BW996便の機内の一部が映っていた。「千丈の
2025.06.27読み物
五十嵐貴久
第八回はこちら交渉人ハイジャック Flight9 ライト1 桑山が大きく開けたドアから、麻衣子は捜査本部に入った。原と成宮、そして他の捜査官がパソコンの画面を食い入るように見つめている。 麻衣子も自分の席に戻り、マウスをクリックした。画面を拡大すると、BW996便の機内の一部が映っていた。「千丈の
2025.06.27五十嵐貴久
第七回はこちら交渉人ハイジャック Flight8 セオリー1 なぜ切った、と聡美が戸惑ったような声でメッセージを読んだ。わたしは信頼できる相手としか交渉をしません、と麻衣子は答えた。「過去、わたしが知る限り、すべてのハイジャック犯は人質に固執し、解放に同意しませんでした。でも、あなたは違う。わたし
2025.05.30五十嵐貴久
第六回はこちら交渉人ハイジャック Flight7 手品1 時計の針が七時五十八分を指した。麻衣子はマイクを掴み、一ノ瀬さん、と呼びかけた。「わたしの声がスピーカーを通じ、機内に流れていますね?」 はい、と聡美が答えた。犯人に伝えます、と麻衣子は紙コップの水で唇を湿らせた。「一階の乗客二百四十人が機を
2025.04.25五十嵐貴久
第五回はこちら交渉人ハイジャック Flight6 プロファイリング1 午後六時二十五分、ターミナルビルからタラップ車が出てきた。乗っているのは四人の作業員だけだ。 空港三階の捜査本部から、道警広報部の白岩課長は固唾を飲んでBW996便の非常口を見つめた。ゆっくりと開いたドアを確認して、ハラコウさん
2025.03.28最果タヒ
題字:はるな檸檬第4回 言いづらいことだけど正直に言おう、と思う前に 人には感情の波があって、愛する上でもいろんな出来事もあり、何かに悩んでしまうこともあるわけで、そんなときに手紙に書くべきだろうかと考え込むようなことを下書きに書いてしんどくなり、やめよやめよ……と思うことって多々ある。自分の気持ち
2025.03.14五十嵐貴久
第四回はこちら交渉人ハイジャック Flight5 パッセンジャーコール 1 畑中さん、と聡美は耳のインカムに手を当てた。「今、五時ジャストよ。アイマスクは配り終えた?」 はい、と一階の畑中が震える声で返事をした。「お客様の様子は?」 『犯人からの要求について説明し、電子シェ
2025.02.28五十嵐貴久
第三回はこちら 交渉人ハイジャック Flight 4 混乱 1 一階を頼む、と屋代は渡辺の肩を押した。ぼくは二階を、とうなずいた野沢がコックピットを出た。 各員に告ぐ、と屋代は乗務員専用の無線をオンにした。「二分後、三時三十分にBW996便がハイジャックされたと乗
2025.01.31五十嵐貴久
第二回はこちら交渉人ハイジャック Flight 3 指示 1 マジかよ、と黒谷浩之はスマホを左右に向けた。窓の外に函館港の大地が広がっていた。 参ったね、と黒谷はスマホを操作した。画面に自分の顔がアップになった。「ええと、どこまで喋ったっけ? 機材トラブルがどうのって、アナウ
2024.12.27最果タヒ
題字:はるな檸檬第3回 「あなたを愛する私」を愛そう 私はあなたにとってただの他人で、そんな他人に何を言われたって嬉しくないのではないだろうか、みたいな不安に囚われて、できるだけ客観的に称えようと必死になっていた時期があります。「どれほどあなたが素晴らしいか」を、理論立てて、相手に証明していく。それ
2024.12.25五十嵐貴久
第一回はこちら 交渉人ハイジャック Flight2 ハコナン1 聡美はドリンクサービスを優菜たち他のCAに任せ、二階にある他のトイレを調べた。ビジネスとエコノミーの間にある右通路側トイレのペーパータオルボックスの下から、まったく同じメッセージ、そして透明な液体が入った点滴パックが出てきた。 二つ
2024.11.29