
交渉人・遠野麻衣子 ハイジャック 第六回
五十嵐貴久
第五回はこちら交渉人ハイジャック Flight6 プロファイリング1 午後六時二十五分、ターミナルビルからタラップ車が出てきた。乗っているのは四人の作業員だけだ。 空港三階の捜査本部から、道警広報部の白岩課長は固唾を飲んでBW996便の非常口を見つめた。ゆっくりと開いたドアを確認して、ハラコウさん
2025.03.28読み物
五十嵐貴久
第五回はこちら交渉人ハイジャック Flight6 プロファイリング1 午後六時二十五分、ターミナルビルからタラップ車が出てきた。乗っているのは四人の作業員だけだ。 空港三階の捜査本部から、道警広報部の白岩課長は固唾を飲んでBW996便の非常口を見つめた。ゆっくりと開いたドアを確認して、ハラコウさん
2025.03.28最果タヒ
題字:はるな檸檬第4回 言いづらいことだけど正直に言おう、と思う前に 人には感情の波があって、愛する上でもいろんな出来事もあり、何かに悩んでしまうこともあるわけで、そんなときに手紙に書くべきだろうかと考え込むようなことを下書きに書いてしんどくなり、やめよやめよ……と思うことって多々ある。自分の気持ち
2025.03.14五十嵐貴久
第四回はこちら交渉人ハイジャック Flight5 パッセンジャーコール 1 畑中さん、と聡美は耳のインカムに手を当てた。「今、五時ジャストよ。アイマスクは配り終えた?」 はい、と一階の畑中が震える声で返事をした。「お客様の様子は?」 思っていたより落ち着いています、と畑中が
2025.02.28五十嵐貴久
第三回はこちら 交渉人ハイジャック Flight 4 混乱 1 一階を頼む、と屋代は渡辺の肩を押した。ぼくは二階を、とうなずいた野沢がコックピットを出た。 各員に告ぐ、と屋代は乗務員専用の無線をオンにした。「二分後、三時三十分にBW996便がハイジャックされたと乗
2025.01.31五十嵐貴久
第二回はこちら交渉人ハイジャック Flight 3 指示 1 マジかよ、と黒谷浩之はスマホを左右に向けた。窓の外に函館港の大地が広がっていた。 参ったね、と黒谷はスマホを操作した。画面に自分の顔がアップになった。「ええと、どこまで喋ったっけ? 機材トラブルがどうのって、アナウ
2024.12.27最果タヒ
題字:はるな檸檬第3回 「あなたを愛する私」を愛そう 私はあなたにとってただの他人で、そんな他人に何を言われたって嬉しくないのではないだろうか、みたいな不安に囚われて、できるだけ客観的に称えようと必死になっていた時期があります。「どれほどあなたが素晴らしいか」を、理論立てて、相手に証明していく。それ
2024.12.25五十嵐貴久
第一回はこちら 交渉人ハイジャック Flight2 ハコナン1 聡美はドリンクサービスを優菜たち他のCAに任せ、二階にある他のトイレを調べた。ビジネスとエコノミーの間にある右通路側トイレのペーパータオルボックスの下から、まったく同じメッセージ、そして透明な液体が入った点滴パックが出てきた。 二つ
2024.11.29五十嵐貴久
Flight 1 BW996便 1 二月十日、午前八時半。 人質を解放しろ、と戸井田といだ警部補が目の前のスマホを睨んだ。ふざけんな、と男の怒鳴り声がした。『俺が何をしたっていうんだ? 悪いのは俺を騙したこの女じゃねえか! ふざけんなよ、畜生! こいつは俺が渡した金を全部ホスト
2024.10.25最果タヒ
題字:はるな檸檬第2回 相手は好きな人なのだから、「うまく言えない」は愛の証明 世の中でよく使われて、角が取れてツルツルになっていて、誤解なく「こういうことを伝えたいんだろうな」と難なく伝わるような、そんな表現ってあちこちにあって、それらを効率よく使い、できるだけノイズなく、複雑さを取り除いて、言い
2024.07.05最果タヒ
題字:はるな檸檬新連載 愛しているから手紙を書きます。 手紙は難しいです。気持ちを伝えるということもなのですが、そもそもこの気持ちがなんなのかを、できるだけ諦めずに、すべて言葉にしなくてはと思う。たとえば、「ここがなんかすごくよくて、だから私はあなたが好きです」って私は確信しているからそれだけで本当
2024.05.31