路上の輝き 第2回
佐々木譲
ふと気がつくと、はやぶさ十号は荒川を渡っていた。 東北新幹線は、盛岡から東京都内まで二時間余で移動するのだ。修平はいまだにこの速さに慣れていない。とうに新幹線の移動の数のほうが、在来線での移動の数を上回っているのにだ。 修平は棚から大きめの帆布のリュックサックを下ろして背負い、ショルダーバッグを肩
2025.09.20読み物
佐々木譲
ふと気がつくと、はやぶさ十号は荒川を渡っていた。 東北新幹線は、盛岡から東京都内まで二時間余で移動するのだ。修平はいまだにこの速さに慣れていない。とうに新幹線の移動の数のほうが、在来線での移動の数を上回っているのにだ。 修平は棚から大きめの帆布のリュックサックを下ろして背負い、ショルダーバッグを肩
2025.09.20
天祢涼
天祢涼 正義の味方1 仕事をする気があるのか? 貸し会議室に入ってきた藤峰晴ふじみねせいを見た瞬間、一条いちじよう直ちよくは顔をしかめそうになった。 豊満な胸を強調するために選んだとしか思えない、サイズの小さなブラウスとジャケット。長い脚を引き立てることが目的であろう、丈の短すぎるスカート。当人に告
2025.08.21
最果タヒ
題字:はるな檸檬第4回 言いづらいことだけど正直に言おう、と思う前に 人には感情の波があって、愛する上でもいろんな出来事もあり、何かに悩んでしまうこともあるわけで、そんなときに手紙に書くべきだろうかと考え込むようなことを下書きに書いてしんどくなり、やめよやめよ……と思うことって多々ある。自分の気持ち
2025.03.14
最果タヒ
題字:はるな檸檬第3回 「あなたを愛する私」を愛そう 私はあなたにとってただの他人で、そんな他人に何を言われたって嬉しくないのではないだろうか、みたいな不安に囚われて、できるだけ客観的に称えようと必死になっていた時期があります。「どれほどあなたが素晴らしいか」を、理論立てて、相手に証明していく。それ
2024.12.25
最果タヒ
題字:はるな檸檬第2回 相手は好きな人なのだから、「うまく言えない」は愛の証明 世の中でよく使われて、角が取れてツルツルになっていて、誤解なく「こういうことを伝えたいんだろうな」と難なく伝わるような、そんな表現ってあちこちにあって、それらを効率よく使い、できるだけノイズなく、複雑さを取り除いて、言い
2024.07.05
永田敬介
自らの身に起きた出来事を、独自の着眼点で笑える漫談に昇華し、お笑いファンに強い衝撃を与え続けている大注目のピン芸人、永田敬介。「スピン」3号に掲載されたエッセイ「ディズニー」も大好評だった永田さんによる、書き下ろしエッセイをお届けします! **********************&nb
2024.05.17恩田陸
本の装幀というものに長らく興味を持っていて、ブックデザインの本を集めるようになり、帯、見返し、化粧扉、小口、花布はなぎれなど、いろいろな用語を覚えた。それらは感覚的に理解できる納得のネーミングだったのだが、ひとつだけ謎の用語があった。「スピン」である。本のてっぺんに付いている、栞しおりの紐。なんだ
2022.10.25